舌耕(ぜっこう)

人々の心の中を話芸や言葉で耕す

 先日、舌耕(ぜっこう)という言葉を初めて知りました。1月に録画していたEテレの「日本の話芸」という番組を見ようとした時のことです。

 そもそもは「おとなのEテレタイムマシン」という番組で、この時は落語。1991年に放送された古今亭志ん朝さんの「抜け雀」でした。

 そのオープニングにこの「舌耕」という言葉が出てきたんです。番組のイントロですね。時間にして1分ちょっと。文字起こししてみました。

 舌耕(ぜっこう)という言葉が昔からあります。

 舌で耕すと書きます。お百姓さんが田んぼや畑を耕して作物を作るように舌で耕す「かせぎ」のことです。

 舌でどこを耕すのか?人の心を…です。

 お百姓さんが田んぼや畑を耕して作物を作るように。

 ひとことひとこと人々の心の中を耕して、笑いと涙と…、いえさまざまな感動と実りをもたらすのです。時には生きる喜びさえも。

 そういう<ことばひとすじ>の話芸をお百姓さんの、あのコツコツとやる仕事になぞらえて「舌耕」と言いました。

 <中略>

 その人の芸に触れたことがその時代をいきた喜びとなるような、そういう話芸の名人をあなたの心の中に宿していただくために…。

 話芸を生業とする人が聞く人の心を耕す。舌耕(ぜっこう)。なんて素敵な言葉なんだ!と思いました。

 アナウンサーの仕事は話芸とは少し趣きは違いますが、視聴者の皆さんの心を耕すお手伝いはできるんじゃないかなと思いました。(アナウンサーの中には「話芸級」の方もいますけどね!)

 心を耕すことをできる「言葉・ことば・コトバ」。

 ニュースでも実況でも、見てくださる方々の心の中に何か実るものが生まれたらな…と日々邁進したいと思います。

 (※しかもこのナレーションが小沢昭一さん!味わいの塊。)